【MLB】大谷翔平のドジャースとの10年7億ドルの新契約はなぜ驚異的なのか

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Jiji Press

落ち着いてよく考えてみよう。

2023年、ボルティモア・オリオールズは新進気鋭の若手と即戦力のベテラン選手の組み合わせでシーズン101勝をあげ、アメリカン・リーグ東地区を制した。信頼性の高い『Cot’s Contract』のデータによれば、オリオールズの開幕時点での26選手のロスターの年俸総額は6080万ドル(約88億1600万円。1ドル=145円換算。以下同)だった。

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何が言いたいかはもうお分かりだろう。大谷翔平とロサンゼルス・ドジャースが結んだ10年7億ドル(約1015億円)に及ぶ新たな契約は、平均年俸(※編集部注:AAV=Anual Average Value。契約総額を契約年数で割った額)にして7000万ドル(約101億5000万円)であり、三桁の勝ち星を挙げたオリオールズのチーム全体のサラリーを大谷一人で1000万ドル(約14億5000万円)近く上回っているのだ。

どうかしているとしか言いようがない。

大谷の新たな平均年俸はオークランド・アスレチックスの年俸総額5680万ドル(約82億3600万ドル)も上回っているが、アスレチックスのオーナーはそもそも勝つつもりがないので比べる意味がない。2023年シーズンの開幕時の26名の年俸総額と比べるなら、タンパベイ・レイズの7310万ドル(約105億9950万円)、パイレーツの7320万ドル(106億1400万円)が大谷1人の平均年俸に匹敵するというほうが意味を持つだろう。

10年間で7億ドルである。

この数字を見て、笑いもしなければ、泣きもせず、息を呑むことすらなく、淡々と叫び上げることができる人はすごいと私は思う。

今回の契約を機に、ファン、メディアの間では、MLBに存在する戦力の不均衡やサラリーキャップ(※編集部注:チームの年俸総額に上限を設ける制度)の必要性に関する議論が活性化することだろう。それも当然だ。

ただ、何らかの形でサラリーキャップを導入するには、MLB選手会を1シーズン以上ロックアウト(※編集部注:リーグ側による選手の締め出し措置。労使協定交渉が暗礁に乗り上げたときにリーグ側が行使する場合がある)しないことには話はまとまらないだろう。この話はまた別の機会にしよう。

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驚異的でしかない大谷翔平の新契約

正直な話、大谷の新契約は現実のものとは思えない金額だ。

ただ、大谷がこの数年間グラウンドで披露してきたプレーが現実離れしたものだったことを思えば、この契約も腑に落ちると言えるかもしれない。大谷の3年連続アメリカン・リーグMVP受賞を阻んだのは、2022年シーズンにア・リーグ新記録となる62本塁打を放ったアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)ただ一人。その年にしても、2人が1位票を、他の28名は2位票を大谷に投じていた。

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過去に例を見ない今回の大谷の契約は、これまでのMLBの流れをリセットしてみせた。こんな契約はもう二度と生まれないかもしれない。

10年間で7億ドル、平均年俸7000万ドル。大事なことなので二回言っておこう。

今回の大谷の契約には、贅沢税(※編集部注:チーム年俸総額が一定の基準額を超えた場合にチームがリーグから徴収される金銭)の額を抑えるため、契約期間全般にわたる繰延条項がいくつも盛り込まれた。そうすることで、ドジャースは大谷を軸としたチームを構成するための余力を残している。

こうして、ウィンターミーティング終了後の慌ただしかった数日間は、驚くべきエンディングを迎えた。

「大谷狂想曲」に終止符を打った狂気のエンディング

単なる偶然かもしれないが、有力なフリーエージェント選手の決断は、意図したものであるにせよないにせよ、ドラマチックになりがちだ。先週金曜日(日本時間9日土曜)の大谷もそうだった。彼が事態に落胆した部分もあったのではないかと推測する。

昨年12月、MLBネットワーク・インサイダーでニューヨークポストのコラムニスト、ジョン・ヘイマン記者が「アーロン・ジャッジがサンフランシスコ・ジャイアンツに行くようだ」とツイッター(現X)に投稿した件はいまだに語り草となっている。ヘイマン記者の投稿は、「新記録を打ち立てたスラッガーがニューヨークを去る!」と即座にビッグニュースになり、ヘイマン記者がジャッジの名前を『Arson』と打ち間違えたことさえ面白半分に報じられていた。結局、ジャッジはジャイアンツと契約せず、ヤンキーズに残留することが判明し、ヘイマン記者は投稿を削除したものの、いまだに間抜けな投稿の象徴として人々の記憶に残っている。

レブロン・ジェームズ(現NBAロサンゼルス・レイカーズ)が初めてフリーエージェントになった2010年の夏、クリーブランド・キャバリアーズからマイアミ・ヒートへの移籍を決めたときの一大騒動を忘れた人はいないだろう。ESPNがジェームズの移籍決断を生中継した特別番組『The Decision』(決断)は事を大袈裟にしすぎた。その結果、番組内でのジェームズの「自分の才能をサウスビーチにもたらす」という台詞はその後、繰り返しテレビを賑わせることになった。

そして、今回の大谷の一件だ。

「大谷がブルージェイズを選択した!」。たぶんね、でもまだわからない。

「大谷がトロント行きの飛行機に乗った!」。いや、彼はまだ南カリフォルニアにいる。

大谷をめぐる状況は、フリーエージェント期間当初の数週間、すっかりベールに包まれていた分、わずか1日で蜂の巣を突いたような大騒ぎとなっていった。やれやれ、である。

そんな『大谷狂想曲』に土曜日(日本時間10日日曜)、終止符を打ったのが、想像を絶する狂気の沙汰と言えるようなドジャースとの契約だったというわけだ。

※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。
翻訳:石山修二(スポーティングニュース日本版)
編集:及川卓磨(スポーティングニュース日本版)

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著者
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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.

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スポーティングニュース日本版編集長

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