ロベイシ・ラミレスは井上尚弥の最大の強敵になり得るのか? 元リング誌編集人が検証

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Robeisy Ramirez could fight Naoya Inoue
Mikey Williams/ Top Rank and WBSS

現地時間12月9日に防衛戦を控える現WBO世界フェザー級王者ロベイシ・ラミレスと、パウンド・フォー・パウンド最強のひとりである井上尚弥は、近い将来に拳を交えるのか。若きキューバの星であるラミレスはモンスターとの対決が期待される強豪の一角だが、スポーティングニュースはその実現可能性を探ってみた。

名門『The Ring』誌(リングマガジン)元編集人で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが検証する。

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ロベイシ・ラミレスと井上尚弥には、それぞれの次戦でけっして侮れない対戦相手が控えているが、ボクシング専門家の間では、この2人の直接対決が近いうちに実現するとの見方が広がっている。そうなれば非常にハイレベルな戦いになることには疑いの余地はない。

ラミレスは、オリンピック金メダルを2度獲得(ロンドン五輪フライ級、リオ五輪バンタム級)したアマチュアエリートで、2023年4月にはアイザック・ドグボエとの決定戦を制し、WBO世界フェザー級王者となった。12月9日(日本時間10日)に米国フロリダ州ペンブロークパインズのチャールズ ・F・ドッジ・シティ・センターにおいて、無敗のラファエル・エスピノーザを相手に2度目の防衛戦を行う(※)。米オッズメーカー(スポーツベッティング)の『FanDuel』によると、このキューバ人サウスポーが「-1300」で圧倒的に有利と予想されている。

一方の現WBC・WBO世界スーパーバンタム級王者の井上は、4階級制覇世界王者であり、またパウンド・フォー・パウンド最強のひとりと目されている。この日本のスーパースターは、1年以内に2階級でのアンディスピューテッド王者になるという偉業に挑もうとしている。12月26日に東京の有明アリーナで、WBA・IBF王者であるマーロン・タパレスを相手にスーパーバンタム級の4団体王座統一戦に挑む。英国のオッズメーカー『SkyBet』によると、『ザ・モンスター』こと井上が「-1600」で圧倒的有利と予想されている。

はたしてラミレスと井上は拳を交えるのか。スポーティングニュースはその実現可能性を探ってみた。

※ラミレス vs. エスピノーザは、WOWOW『エキサイトマッチ』で2024年1月8日に録画放送・配信予定となっている。

井上尚弥はフェザー級に階級を上げるのか

井上がタパレスに勝てば、ボクシング史上初のスーパーバンタム級4団体統一王者となる(2階級4団体統一はテレンス・クロフォードに続く男子ボクサー史上2人目になる見込み)。7月にそれまで無敗だったスティーブン・フルトンを8回TKOで破り、WBCとWBOの同級タイトルを獲得したばかりだ。

井上がこの偉業を実現すれば、端的に良いニュースと言える。

だが同時に悪いニュースの側面もある。井上がたった2戦でスーパーバンタム級の主要ベルトを統一することにより、この階級では対戦相手の選択肢が非常に少なくなってしまうことだ。元バンタム級世界王者のルイス・ネリは楽しみな相手になり得るが、それも1戦に過ぎない。井上に相応しい挑戦者と対戦するためには、なかば強制的に階級を上げることを余儀なくされるだろう。

井上尚弥 vs. ロベイシ・ラミレスのマッチメークは容易か

答えはイエスである。

2人ともトップランク(TOP RANK)社と契約しているうえ、彼らの試合は米国やスペイン語圏ではESPN系列で放映されている。さらには、ラミレスの初防衛戦は、7月25日の井上 vs. フルトンのアンダーカードだったのだ。清水聡を5回TKOで下した試合だ。日本のファンはこのキューバ人ボクサーの実力をよく知っているだろう。

「井上 vs. ラミレス」は日本で大規模なイベントになるはずだ。

関連記事:【TSN選出】日本人ボクサー・パウンド・フォー・パウンド トップ5【2023年夏版】

井上尚弥 vs. ロベイシ・ラミレスの勝者は誰になるか

もし井上とラミレスがそれぞれの次戦で圧倒的な勝利を挙げ、両者の対決が実現すれば、「井上が有利とされるだろう」と考えるのが現実的だ。

『ザ・モンスター』への評価は、もはやマニー・パッキャオと同じレベルに近づきつつある。相手より体格が小さいことも共通している。井上のボクシング技術、スピード、そして何よりパンチの威力は階級を上げても十分に通用する。

しかしながら、ボクシングの歴史では偉大なチャンピオンでも階級を上げたことによって平凡なファイターになってしまうことを示している。パッキャオはウェルター級でも大きな勝利を挙げたが、ノックアウト勝ちは影を潜めた。スピード、駆け引き、そして手数に頼って戦うしかなかった。

そして、ラミレスのスピードと技術はどのような相手にとっても厄介だ。

ただし、注釈をつけるなら、井上が階級を上げてフルトンとの対戦が決まったときも多くの専門家が同じことを言ったという事実だ。結局、それは正しくなかった。

筆者は井上がラミレスに勝つと予想するが、それには大きな躊躇いも伴う。井上といえども、階級を上げるたびに課題は厳しくなり、リスクも高くなる。そのことは井上自身が最もよく知っているはずだ。だが、どれだけ体格で優っていても、この日本人スターを恐れさせるボクサーは出てこなかった。これもまた事実だ。

かつてこの井上のような底しれぬボクサーはいただろうか──。

原文:Will Robeisy Ramirez fight Naoya Inoue? Cuban star could be The Monster’s biggest test to date
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本編集部 神宮泰暁


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著者
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Tom Gray is a deputy editor covering Combat Sports at The Sporting News.

角谷剛 Go Kakutani Photo

米国・カリフォルニア州在住。慶應義塾大学卒。主に米国でIT関連の会社員生活を経て、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つ。コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得。現在は州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。スポーツ、旅行、文化に関する多くのウェブサイトで執筆中。