サッカーにおけるイエローカードは、競技規則の範囲内に選手たちをとどめるためのものだ。
危険行為やスポーツマンシップに反する振る舞い、あるいはその他の不正行為は、主審からの警告につながり得る。イエローカードが出されれば、選手たちは試合の残り時間をぎりぎりのところで戦い続けることになる。イエローカード2枚で選手は退場となるからだ。
しかし、選手が喜びながらユニフォームを脱いだ際にイエローカードが出されるのは、厳しく思われるかもしれない。長年にわたって同様の処分がなく、選手たちが好きなように祝えたことを考えれば、なおのこと不思議だろう。
だが、現在はそれがルールになっている。これはなぜなのか。『スポーティングニュース』が、選手がユニフォームを脱いだ際にイエローカードが出されるサッカーのルールについて簡単にまとめる。
なぜ選手がユニフォームを脱いだらイエローカードを出される?
サッカーの試合において、選手たちは喜ぶ際にユニフォームを脱ぐことが許されていない。
厳密に言うと、審判たちはIFAB(国際サッカー評議会)の競技規則で、喜ぶ際にユニフォームを脱いだ選手に男女問わずイエローカードを出すことが義務づけられている。
最初にこのルールが適用されたのは2004年だ。様々な理由から取り入れられた。第一には、できるだけ時間の浪費を抑えるためだ。また、これらはスポーツマンシップに反すると見なされる可能性のある行為でもある。
ユニフォームを脱いだ際のイエローカードに関するFIFAのルール
FIFA(国際サッカー連盟)の公式競技規則では、ファウルや不正行為に関して以下のように定められている。
得点をした時に喜ぶことはできるが、過度になってはならない。あらかじめ演出されたパフォーマンスは勧められず、時間をかけ過ぎてはならない。得点を喜ぶために競技のフィールドを離れることは警告(イエローカード)の反則にならないが、選手はできるだけ早く戻るべきである。
以下の場合、得点が認められなかったとしても、選手は警告されなければならない。
- 安全や警備に問題が生じる方法でピッチ外周フェンスによじ登る、または観客に近づく
- 挑発的、嘲笑的、また相手の感情を刺激する行為
- マスクやその他の同様のもので顔や頭を覆う
- ユニフォームを脱ぐ、あるいはユニフォームを頭にかぶる
ユニフォームを脱いでイエローカードを出された選手たち
あからさまな喜びかたでイエローカードを出された選手の有名例は少なくない。
最も直近では、2022年の男子ワールドカップだ。ブラジルに1-0と勝利した試合で、カメルーン代表のヴァンサン・アブバカルが、終盤に決勝点をあげてユニフォームを脱ぎ、2枚目のイエローカードを出されて退場となった。ブラジルが同点弾を目指した最後の数分間を数的不利で戦うことになったカメルーンだが、最終的に逃げ切りに成功している。
マリオ・バロテッリは何度か喜んだ際にイエローカードを出されてきた。そのひとつが、マンチェスター・シティ時代にマンチェスター・ユナイテッドを相手に得点した際、ユニフォームをまくしあげ、下に着ていたシャツに書かれたメッセージ「Why Always Me?」を見せた時だ。イタリア代表でもEURO2012のドイツ戦でユニフォームを脱ぎ、筋肉を見せつけてゴールを喜んでいる。
このルールは女子サッカーでも同じように定められており、いくつか有名なケースがある。1995年の女子ワールドカップ決勝では、中国を相手に決勝PKを決めた元アメリカ代表のブランディ・チャスティンがユニフォームを脱いでいる。スポーツの歴史で最も有名な写真のひとつとなった。
2022年の女子のEURO(欧州選手権)でも似たケースがあった。ドイツとの決勝で決勝点をあげたイングランド代表のクロエ・ケリーだ。イエローカードを出されたが、彼女はまったく気にしなかっただろう。試合は終了し、イングランドはタイトルを獲得した。
原文:Why do players get a yellow card for taking shirt off? Goal celebrations draw bookings by FIFA rule(抄訳)
翻訳:坂東実藍