メイウェザーvsマクレガー、猪木vsアリなど、フューリーvsガヌーより前に実現していた異種格闘技戦トップ5

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日本時間10月29日朝、WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー vs. 元UFCヘビー級王者フランシス・ガヌーという、禁断のボクシング vs. MMAのキング対決がサウジアラビアで行われるが、いわゆる『異種格闘技戦』は、格闘界において「見世物」的な側面を持ちつつも、常にファンの注目を集めてきた。

『人類最凶決定戦』を謳うこの試合も御多分に漏れず物議を醸しているが、過去の異色対決はどうだったのか。このフューリー vs. ガヌーよりも前に実現していたMMAファイター、ボクサー、そしてプロレスラーたちが戦った異種格闘技戦トップ5を紹介する。

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今年の格闘技界は盛りだくさんだ。夢の対決と思われていた試合が次々に実現し、記録破りの数字が現れている。世界中の優れたファイターたちがそれぞれの分野でトップに君臨することを証明している。

しかし、あるスポーツのアスリートが別のスポーツに挑むとどうなるだろうか。掟破りではないが、ファンは目を背けるか、あるいは興味をかきたてられるかのどちらかである。10月28日(日本時間29日朝)に行われるタイソン・フューリーとフランシス・ガヌーの一戦もそのひとつだ。この試合は日本ではDAZN PPVで配信される。

WBC世界ヘビー級王者であり、業界でも屈指のヘビー級ボクサーであるフューリーが、元UFCヘビー級王者のフランシス・ガヌーと戦う。ガヌーはMMAの世界で打撃系の優れた実力を誇ってきたが、これまでにボクシングのルールで試合をしたことはない。サウジアラビアで行われるこの試合は両者のスタイルの違いから「見世物」と考えられるかもしれない。

ボクシングファンは知っての通りだが、フューリーは真のエンターテイナーだ。ガヌーと戦うことにユニークな視点を生み出した。両者はともに強打で知られる。この試合によって、ボクシングとMMAの打撃はどちらの方が強力なのかという議論がまたも巻き起こっているのだ。さらに、逆にボクサーがオクタゴンに入ればどうなるか、プロレスラーがボクシングのリングに入ればどうなるか、あるいはMMAファイターがその両方をすればどうなるか、そんな議論も交わされることになる。

そうした議論はこれまでにもあった。これで最後にもならないだろう。長年に渡って、異種格闘技ファイターたちの戦いは、それぞれの結果にかかわらず、人々に話題を提供してきたのだ。

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スポーティングニュースでは、MMAファイター、ボクサー、そしてプロレスラーたちが戦った異種格闘技戦の歴史からトップ5を選んでみた。なお、あえて順位はつけていない。

異種格闘技戦トップ5

選外候補

  • フロイド・メイウェザー vs. ビッグ・ショー(レッスルマニア24、2008年)
  • レイ・マーサー vs. キンボ・スライス(ケージ・フューリー・ファイティング・チャンピオンシップズ5、2007年)
  • ジェームズ・ワーリング vs. ヘンゾ・グレイシー(WCC1、1995年)

ランディ・クートゥア vs. ジェームズ・トニー(2010年『UFC 118』、MMAルール)

MMAファイターがボクシングのリングに上がることはあっても、その逆の例は少ない。ロイ・ジョーンズ・ジュニアやイベンダー・ホリフィールドとも対戦したボクシング世界3階級制覇王者のジェームズ・トニーはそれを行った。2010年にオクタゴンに足を踏み入れ、UFC殿堂入りファイターのランディ・クートゥアと戦ったのだ。試合そのものはミスマッチだったが、記憶に残る一戦である。

当時42歳だったトニーは、ボクサーとしてのキャリアは晩年にさしかかっていた。47歳だったクートゥアはこの後すぐに引退した。このボクシング vs. MMAの戦いでは「後者=MMA」が勝利した。1ラウンド目でクートゥアがトニーをテイクダウンし、肩固めでタップアウトさせたのだ。

「ジェームズ・トニーと戦うことは興味深かった。4か月でジェームズがどれだけMMAを学べるかを知りたかったからだ。たった1分くらいで答えは分かったけどね。大したことはなかった」と、クートゥアはスポーティングニュースとの独占インタビューで述べた。

両者はその後、ボクシング・ルールでの再戦をするはずだったが、クートゥアがそれを拒否したとスポーティングニュースに語っている。あっけない結果ではあったが、それぞれの分野でトップファイターだった2人が激突した試合だったことは間違いない。

アンデウソン・シウバ vs. フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(2021年、プロボクシングルール)

アンデウソン・シウバは2006年から2012年前の間、MMAシーンでまさに無敵だった。あの時代のシウバは史上最強の呼び名も高い。この元UFCミドル級王者は類まれな打撃力を誇り、ディフェンスにも優れていた。だが、MMA界ではその後トラブルが続き、長い不遇の時代(2013年から2020年までの戦績は1勝7敗、1ノーコンテスト)を経て、UFCを去り、ケージファイトから事実上の引退。ボクシングに転向した。

シウバは1998年にボクシングを始めたが、2021年にプロボクサーとして復帰するまでは2試合を戦ったのみ(最後の試合は2005年)だった。復帰戦の相手フリオ・セサール・チャベス・ジュニアは、殿堂入りボクサーのフリオ・セサール・チャベスの息子である。度重なる体重超過と禁止薬物テスト失格で悪名高いものの、元WBC世界ミドル級王者の称号を持つボクサーだ。

試合では『ザ・スパイダー』の異名を持つシウバがチャベスを圧倒した。8ラウンド中5ラウンドで2桁のパンチをヒットさせたのだ(チャベスは1ラウンドのみ)。判定は僅差の2-1でシウバ勝利となったが、どちらがより優れたファイターであったかは誰の目にも明らかだった。

レイ・マーサー vs. ティム・シルビア (2009年『Adrenaline 3』、MMAルール)

元WBO世界ヘビー級王者のレイ・マーサーは、2008年にボクシングから引退した。しかし、その前からMMAにも参戦していた。『Merciless』(無慈悲)の異名で呼ばれたマーサーは、2007年にはストリート・ファイターとして知られたキンボ・スライスとMMAルールで対戦し、ギロチンチョークで敗れていた。そして2009年、ケージへと再び舞い戻り、元UFCヘビー級王者のティム・シルビアとの戦いに挑んだ。

当時シルビアは2連敗中だった。とは言ってもアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとエメリヤーエンコ・ヒョードルという偉大な2人に敗れたものだ。当初はボクシングルールで行われる予定だったが、MMAルールに変更された。

マーサーはそれを意に介さなかった。1ラウンド目開始1分もたたないうちに、たった1発のパンチでシルビアをノックアウトしたのだ。一瞬のことで格闘技ファンは、マーサーがケージ内でどれだけの実力を発揮できるのかを見ることができなかったが、ボクサーとして最高の結果であったと考えられている。

フロイド・メイウェザー vs. コナー・マクレガー(2017年、プロボクシングルール)

現時点で史上最大の異種格闘技戦はこのカードだろう。フューリー vs. ガヌーは、フロイド・メイウェザー vs. コナー・マクレガーが生み出した空前の熱量に届くだろうか。

この一戦前、すでに引退していたメイウェザーは、マクレガーと戦うために復帰した。マクレガーはUFC2階級王者であり、今日においてもMMA史上最大のスター選手でもある。ニューヨークからロンドンまで、この2人の類まれなキャラクターは世界中の注目を集めた。

試合はメイウェザーとマクレガーが一進一退で進んだが、メイウェザーは終始ダメージを避け続けた。10ラウンド目にメイウェザーは猛攻に転じ、マクレガーを圧倒した。試合はTKOで終わった。

メイウェザーはプロボクサー戦績を50勝無敗に伸ばしただけではなく、1億ドル(約110億円)を獲得したとされる。マクレガーもペイ・パー・ビュー収益の前に3000万ドル(約33億円)を得たと報じられた。この試合はアメリカ国内だけで430万件以上のペイ・パー・ビュー売上と入場収入5541万4869.79ドル(約61億円)を記録した。

モハメド・アリ vs. アントニオ猪木(1976年、特別格闘技戦ルール)

格闘技界に歴史において「モハメド(モハメッド)・アリ vs. アントニオ猪木」こそが異種格闘技戦の源流であったと言われている。1976年6月26日、史上最高ボクサーのひとりと、世界で最も影響力が大きいプロレスラーのひとりが対戦したのだ。

「格闘技世界一決定戦」と名付けられたこのイベントは、東京の日本武道館に14000人以上の観客を集めた。当日は米国各地のプロレス団体で同時多発的にビッグマッチが行なわれ、世界各地に中継された。WWWF(現WWE)によるニューヨークのシェイ・スタジアム大会でも、アンドレ・ザ・ジャイアントがチャック・ウェプナーを相手に異種格闘技戦を行った。

アリ vs. 猪木は、頭突き、肘打ち、スタンドでの蹴りなどが禁止された特別ルールで行われ、猪木はのちに「アリキック」と称される、仰向けに寝ながらの蹴りをアリの脚に計107発も浴びせたが、アリは数発のパンチしか放てなかった。

47年前、会場を埋め尽くした14500人の観客と世界中で14億人を数えたとされる視聴者は、何が「真剣勝負」で、何が「演技」であったかを考えこむことになった。

15ラウンド引き分けの結末は人々を失望させたが、今ではこの特殊な攻防が『近代MMAの先駆け』だと考えられている。その後、日本ではUWFを経て、リングスやパンクラスが誕生し、その遺伝子がPRIDEに引き継がれ、そして米国ではUFCが隆盛を極めた。

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原文:Mayweather-McGregor, Ali-Inoki & the top crossover fights heading into Tyson Fury vs. Francis Ngannou boxing match
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁


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著者
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Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.

角谷剛 Go Kakutani Photo

米国・カリフォルニア州在住。慶應義塾大学卒。主に米国でIT関連の会社員生活を経て、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つ。コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得。現在は州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。スポーツ、旅行、文化に関する多くのウェブサイトで執筆中。