7選手が退団…女子バスケの名門シャンソンに何が起こったのか? 経緯・理由・今後を解説

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2022年バスケットWリーグ 敗れたシャンソン化粧品
2022年のWリーグプレーオフ準決勝第2戦でトヨタ自動車に敗戦。客席に向かったおじぎするシャンソンの選手たち
(時事通信)

2023年2月22日、バスケットボール女子Wリーグ(WJBL)に加盟するシャンソン化粧品シャンソンVマジックは、李玉慈(読み方:リーグ公式リリースではリ・オクジャ、ほかにイ・オクチャの読み方も)ヘッドコーチと元日本代表の藤岡麻菜美、野口さくらら7名の選手が退団したと発表した。FIBA女子ワールドカップ2022の日本代表メンバーだった吉田舞衣は引き続き在籍する。

日本女子バスケ界の名門シャンソンに何が、なぜ起こったのか。事の経緯、退団及び混乱の理由・原因、今後について解説する。

シャンソン化粧品を退団した選手は誰?

2023年2月22日に退団が発表された選手は以下の7名となる。7選手に加えて、李玉慈ヘッドコーチも辞任・退団した。

  • 藤岡麻菜美(PG/169cm)
  • 千葉歩(SG/167cm)
  • 野口さくら(PF/181cm)
  • 大沼美琴(SF/174cm)
  • 宮坂桃菜(PG/163cm)
  • 北村悠貴(SG/173cm)
  • 栗林未和(C/188cm)

シャンソンが発表した公式リリースによると、7選手の退団の理由は「方向性の違い」だという。李HCは、選手たちの退団という混乱を招いた責任をとって辞任した、としている。

シーズン中の多数退団…異常事態はなぜ起こったか

シャンソンは12月より不帯同の選手が続出していた。12月31日の新潟アルビレックスBBラビッツ戦はわずか7選手のロスターで戦った。藤岡と大沼は同月24日の姫路イーグレッツ戦、千葉と宮坂は同30日の新潟アルビレックスBB戦、野口、栗林、李ヘッドコーチは1月8日のアイシンウィングス戦以降の試合に帯同していない。

シャンソンは不帯同選手について一貫して「コンディション調整のため」とし、李ヘッドコーチの不帯同理由については発表していなかった。

しかし、2月9日に日刊スポーツが「12月末でヘッドコーチと数名が退団・退社しているとの情報もある」と報道。同紙によると、チームには以前からベテランと若手の間で軋轢が生じており、12月4日の皇后杯2次ラウンドで東京医療保健大学に破れたことで、決定的な亀裂が生じたという。

このような異常事態を受けて、Wリーグは2月10日に報道各社へプレスリリースを送付。シャンソンには昨年末より継続的なヒアリングを実施し、再三にわたってリーグに関わるすべての人々への説明を求めてきたと説明し、シャンソンから「2月25日までに何らかの説明を行う」という連絡を受けたと発表していた。

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女子バスケ界の名門シャンソン化粧品は今後どうなるのか?

Wリーグは22日付で新エントリーリストを受理したと発表した。シャンソンは残った9選手と2名の特別指定選手の下記11人のロスターで、2月25日より再開した残りのリーグ戦とプレーオフを戦った。

シャンソン化粧品の2023年2月22日以降の体制(2022-23シーズン)

ロスター(選手一覧)

  • 小池遥(PG/167cm)
  • 吉田舞衣(SF/176cm)
  • 谷村里佳(PF/185cm)
  • 金田愛奈(SG/175cm)
  • 橋口樹(C/180cm)
  • 知名祐里(PG/165cm)
  • パレイ・ルセアネヘイララ・紀子(C/180cm)
  • 水野妃奈乃(SF/174cm)
  • 佐藤由璃果(176cm/PF)
  • トラオレ・セトゥ(C/190cm) ※特別指定選手
  • イゾジェ・ウチェ(C/188cm) ※特別指定選手

ヘッドコーチ

  • 鵜澤潤 ※アソシエイトヘッドコーチから昇格

シャンソン化粧品の2022-23シーズンの最終成績は?

シャンソン化粧品はWリーグ2022-23シーズンのレギュラーシーズンを7位(15勝11敗)で終え、上位8チームが参加するプレーオフに進出。セミファイナルまで勝ち上がった。

プレーオフの勝ち上がりとスコアは以下の通り。

◆セミクォーターファイナル(4月1日)
シャンソン化粧品 70-62 トヨタ紡織サンシャインラビッツ(レギュラーシーズン6位)

◆クォーターファイナル(4月2日)
シャンソン化粧品 78-76 三菱電機コアラーズ(レギュラーシーズン3位)

◆セミファイナル(4月8〜9日)
シャンソン化粧品 64-78 トヨタ自動車アンテロープス(レギュラーシーズン2位)
シャンソン化粧品 56-66 トヨタ自動車アンテロープス

シャンソン化粧品に起きた内紛のその後、続報

4月11日、日刊スポーツが本件の続報を報じた。

記事によると、退部した一部選手がチームの川村旭代表によるパワハラで精神的苦痛を受けたとして、心療内科医の診断書を添えて退職届を提出していたとのこと。情報提供者は「関係者」としている。

川村代表は日刊スポーツの取材に対し、一部選手に対して解雇やペナルティを示唆する言動をしたことを認めたが、チームの顧問弁護士を務める相川洋介氏はパワハラを否定。関係者の証言は事実に反するとの見解を示している。

さらに4月20日、元所属選手の藤岡麻菜美が自身のSNSアカウントを通して声明を発表。2月11日と4月11日にシャンソン化粧品が発表した内容に関して、一部事実と異なる部分、記載されていない事実関係もあると述べ、現在はWリーグの調査の結果を待っている状態だという。

Wリーグは同日、プレスリリースを送付。Wリーグのコンプライアンス委員会所属の弁護士からなる調査チームを編成し、3月より退団選手7名のヒアリングを行った結果、「その他関係者を対象とする2次調査を要する」という報告を受けたと説明。そして今後、シャンソンとその他関係者に協力を要請し、さらなる調査を進める予定であることを明かした。なお、調査完了時期については「未定」としている。

シャンソン化粧品を退団した選手たちは今後どうなる?移籍先は?

Wリーグは本件における特例措置として、従来より早い3月3日より7選手を自由契約選手リストに公示。そして4月10日、栗林未和が退団選手第一号として東京羽田ヴィッキーズに移籍することが発表された。17日には千葉歩の同チーム加入も発表された。

以下に、退団選手たちの移籍先・今後のキャリアを時系列順に掲載する(随時更新予定)。

  • 栗林未和(東京羽田ヴィッキーズへ移籍)
  • 大沼美琴(FABバスケットボールスクールのコーチングスタッフに就任)
  • 千葉歩(東京羽田ヴィッキーズへ移籍)
  • 野口さくら(アイシンウィングスへ移籍)
  • 藤岡麻菜美(千葉英和高校女子バスケ部ヘッドコーチに就任。TOKYO DIMEでもプレー予定)
  • 北村悠貴(トヨタ紡織サンシャインラビッツへ移籍)
  • 宮坂桃菜(山梨クィーンビーズへ移籍)
  • 水野妃奈乃(三菱電機コアラーズへ移籍)

シーズン終了後にチームを退団した谷村里佳はアイスフォーゲルUSCフライベルク(ドイツ)、パレイ・ルセアネヘイララ・紀子はトヨタ自動車アンテロープスに移籍する。​​​​​​​

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著者
青木美帆 Miho Aoki Photo

早稲田大学在学中に国内バスケットボールの取材・執筆を開始し、バスケ専門誌編集部などを経て2015年に独立。現在は国内バスケ関連の記事執筆、編集、映像コンテンツのコーディネートなどを中心に活動中。