榊原CEOが大会総括&花束問題謝罪「フロイドに救われた」 朝倉未来はMMA復帰約束|超RIZIN&RIZIN.38

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Floyd Mayweather vs Mikuru Asakura
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さいたまスーパーアリーナで開催された『超RIZIN(スーパーライジン)』&『RIZIN.38』について、9月25日の大会深夜、RIZINの榊原信行CEOが記者会見を開き、大会を総括。フロイド・メイウェザーへの花束贈呈時の不祥事について冒頭で改めて触れ、謝罪とともにメイウェザーの紳士的な態度に救われたと感謝した。また、朝倉未来は一夜明けて、総合格闘家として強くなるためこれからも挑戦を続けることを表明した。

ごぼうの党・奥野氏に怒り露わ、「日本全体に謝罪しないといけない」

今回の意欲的な2部構成のイベントは、フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来のエキシビションマッチだけでなく、第1部の『超RIZIN』、第2部の『RIZIN.38』ともに好試合が続き、MMAイベントとしては満足度の高い大会となった。しかし、メイウェザーへの花束投げ捨て問題は、格闘技界のみならず一般のタレントや著名人もこぞって批判的な反応を示した。また、PPVで世界50か国以上に発信されたことで、海外メディアも格闘技ファンの批判の声をとりあげた。結果として、好試合の数々よりも花束問題が目立つことになってしまった。

忸怩たる思いを滲ませた表情の榊原CEOは、大会総括の記者会見冒頭でも改めて花束の件に触れ、「リングは神聖な場所、品性下劣な男をこの場に上げたことをお詫びします。世界中の人が観ているなかで日本の恥を晒した。今後こういうことがないようにします。許してください。ほんとうにすみません」と謝罪した。

高額オークションでNFTチケットを420万円の最高額で落札し、副賞の花束贈呈の権利を手に入れた、政治団体ごぼうの党の奥野卓志代表について、榊原CEOは面識はなかったと話した。それでも「日本全体に謝罪しないといけないくらい悲しい出来事が起きたことを主催者を代表してお詫びしたい」と繰り返し謝った。

一方で、そうした非礼を前にして、冷静に自ら花束を拾い上げたメイウェザーに対しては、榊原氏自ら試合後に謝罪し、受け入れてもらえたという。そのうえで、「男としての紳士的な行動。本当に素晴らしい行動だった。主催者としてフロイドに救われた」と、感謝した。

今後もオークションによるNFTチケットの買い手が悪意を持ってイベントに参加する可能性については、再発防止のためにも「徹底的に(対策するためにも)向き合う」とした。奥野氏については、「(公の場に)出てきて謝罪するべき。でなかったら普通の社会では許されることではない」と断じた。

メイウェザーは花束問題に触れず、朝倉戦も「本気になる必要があるのか?」

メイウェザー本人はというと、試合後の記者会見では、花束問題には触れず、そうした騒動も含めて「俺にとっては呼吸するようなものだからね」とどこ吹く風。表向きは来日以来、爆買いとパーティー三昧だったメイウェザーだが、突発的なスケジュールながらしっかり練習もこなしていた。ただ、大会当日まで時差ボケが解消せず、3時間ほどの睡眠しかとれなかったと言い、「動きが悪かったかもしれないが言い訳はしない」と振り返った。

朝倉にいくつかクリーンヒットをもらったことについても、おかげで楽しくなったとし、「これはエキシビションであって、強打をもらったとしても気にするようなものじゃない。これまで世界中のトップファイターのパンチを食らってきたからね」と話した。

本気になったかについても、「(エキシビションで)本気になる必要がある? 相手が当ててきたからボディに当て返した。それでも舌を出したり、笑って挑発してきたから、そういうつもりならもういっちょやり返してやるよってだけだよ」と否定。2回TKOについては、「日本の友人からのリクエストだった」と明かした。

戦ってみた朝倉については、「(いいパンチを)食らってからも攻めに向かってきたのは評価できる」とし、もっと早くからボクシングを始めていれば「いいところまでいけたんじゃないか」と褒め称えたが、どこまでも余裕を崩さなかった。

また、ゲストとして最前列で観戦し、試合後には握手を交わしたかつての宿敵マニー・パッキャオ(フィリピン)との再戦については、「(世界王者レベルの相手と戦うような)リスクは負わないよ。楽して金を稼ぐためにやっているんだから」として否定。9分で2000万ドル(約28億7600万、1ドル=約144円で換算)を稼いだ今回の朝倉戦のようなエキシビションマッチを続けることを宣言した。

もうひとりの宿敵コナー・マクレガー(アイルランド)との再戦報道もあるが、まずは11月の英国人YouTuber・デジとの試合でひと稼ぎし、2023年に日本に戻ってくることを約束した。

人生初TKO体験の朝倉未来はMMA復帰を明言

下馬評通りの結果ながら、業界の識者が思う以上に善戦した朝倉未来は、頭部に大きなダメージを負いながらも今後の格闘家人生への手応えをつかんだようだ。

試合直後のダメージが抜けきらないタイミングでの記者会見では、「(2ラウンド終了間際の最後のダウンは)何であれで倒れたのか謎」としながらも、メイウェザーについては「すごい反応速度。技術が異次元」と脱帽した様子だった。

「MMAの選手としてやって良かった。メイウェザーとここまで戦えたのは自信になった。(もうほかの)MMAの選手には負けないんじゃないか」と話し、あくまで今後のMMA復帰を念頭に置いていることを話した。

試合の数時間後には、自身のYouTubeチャンネルに動画を投稿。キャリアで初めてTKOされたことについて「最後の(カウンターの右ストレート)以外は1個も効いてないのに、最後のは記憶がない」とし、人生初の被KO体験に「何で(KOされた人が)立てないのか、その気持ちがわかった」と話し、実際に平衡感覚がなくなった体験を話した。

また、「耳が散った。完全に破れてる」といい、どこかで受けたパンチで鼓膜が破れたことを明かした。榊原CEOが会見で朝倉が病院に診断を受けにいったことを話していたが、診断結果については触れなかった。

メイウェザーについては、右ストレートの癖を見抜いて攻めるはずが、思い通りにはいかなかったようだ。とくに踏み込みとバックステップの速さに脱帽したようで、攻めに行こうにも、「えぐかった。あれは無理」という離れ方だったという。

榊原CEOによると、朝倉はMMA復帰に向けての準備に時間が必要だとして、年内復帰は不透明だという。一夜明けた26日には、自身のTwitterに「ボクシングも、総合格闘技もどちらも素晴らしい競技です。いつかキックボクシングもやってみたい。まずは強くなった姿で総合格闘技復帰します」と投稿した。

メイウェザー戦を経験し、過去に発言した「30歳で引退」というキャリアプランから心変わりした様子もうかがえる。大一番を経験した「新たな」朝倉未来として、フェザー級王者の牛久絢太郎やクレベル・コイケとの対戦が期待される。

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著者
神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。