里崎智也が高校球児に送るメッセージ『上のレベルに行きたいんだったら…』

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里崎智也 Tomoya Satozaki
スポーティングニュースの独占取材に応じてくれた里崎智也氏
(Takuma Hayasaka)

千葉ロッテマリーンズや日本代表で活躍し、引退後の現在もプロ野球、MLBの解説やYouTuberとして活動の場を広げている里崎智也氏に『スポーティングニュース』が独占インタビューを敢行した。今回は、自らの高校時代について振り返りながら、現在の高校球児へのメッセージ、うまくなるための秘訣などを語ってもらった。

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今できることは30年前にできない

里崎氏は、ロッテで日本一、日本代表としては第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一に輝き、個人としてもNPBでベストナインとゴールデングラブ賞を2度、WBCでもベストナインを受賞した。そのほかにもオールスターゲームで優秀選手賞を受賞するなど、輝かしい実績を誇っている。

プロの世界で成功を収めた里崎氏だが、今振り返ってみて高校時代に「あれをやっておけばよかった」と思うようなことはあるのだろうか。

「僕は『あれをやっておけばよかったな』というやつは馬鹿だなと思っています(笑)」

もちろん、この言葉には続きがある。

「なんでかというと、今の知識があるから『あれをやっておけばよかったな』と思うわけです。今の知識と科学技術とトレーニング施設とサプリメント系が、その時代にあったのかという話なんですよ。今の知識を持って(里崎氏の高校時代にあたる)30年前に帰れるんだったらもっとできることはいっぱいありますよ。でも、時代が違いすぎて今できることのほとんどは30年前にはできないんですよ」

言われてみると当然の話である。

「(30年前の時点で)それが良いと思ってやってきて、ここまで来てるわけですから、僕のなかではまぁまぁ良かったなと思っています」

里崎氏は、30年前と今の違いの具体例として、進化したプロテインや動画の存在を挙げる。

「今できて30年前にできたことなんて何もなかったんじゃないですか? プロテインなんて、くそまずい『なんだこれ』みたいな薬みたいなやつだったし(笑)、水なんて飲んじゃいけない時代だったんですよ。(当時は)変化球の握りを本(写真や静止画)で勉強していました。今は動画でダルビッシュ(有/MLBサンディエゴ・パドレス)が握り方から捻り方まで全部(YouTubeなどで)教えてくれるんですから」

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『怪我するかもしれない』と思って練習しなかったら下手くそは下手くそのまま

それでは、今の若い選手たち、特に高校球児に対するアドバイスを送るとしたらどんなメッセージなるだろうか。里崎氏はズバリ一言、「死ぬほど練習しろ、です」と言う。

「死ぬほど」というのはもちろん例えである。自分の限界に挑戦せよ、という意味だ。

「僕の持論は『下手くそは怪我したっていいじゃん』です。下手くそは練習しないとうまくならない。もちろん怪我しないように、ですよ。『怪我するかもしれない』と思って練習しなかったら下手くそは下手くそのままだから夢を掴めないですよね。上のレベルに行きたいんだったらとにかく練習しろ、と」

怪我を恐れて、最初から練習をセーブしていたらうまくならない。怪我を恐れずにたくさん練習をすることが大事だということだ。

また、一般的に「練習=体を動かすハードワーク」と捉えられるが、里崎氏は練習はそれだけではないという。

「体を動かすだけが練習じゃないんですよ。それこそYou Tubeを見るのも、本を読んで他のアスリートの知識や考え方を勉強するのも、野球の試合を見るのも練習なんですよ。1日に何時間を野球に時間を当てられるか。下手くそがそれ以外のことに時間を当てて、どうやってうまくなるんやって(笑)」

体を動かすことだけではなく、見ることも知識を吸収することも含めての練習だと説く。要するに、どれだけ真摯に野球に向き合うことができるかが大事ということだ。野球に限らず、何かを極めたい、上達したいと思うのであれば、誰にでも当てはまることといえるのではないだろうか。

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一流は質と量を兼ね備えた練習をやっている

「僕の考えですけど」と前置きをした上で、里崎氏はこう続ける。

「アマチュアが量より質と思っているうちは一生(プロになるのは)無理ですね。質の高い練習って能力が高い人にしかできないんですよ。量より質という人は楽したいだけ。楽して得られるものなんてありません。一流選手は質の練習を量やってますからね。量より質という人は(練習を)早く切り上げたいだけ。(量の練習をしなかったら)うまくならないですよ。差が広がるだけです」。

ただし、練習をしたからといって必ずうまくなるという保証はどこにもない。身近な事象に置き換えてみるとわかりやすい。

「一番難しいのは練習したからって結果が出るわけじゃないこと。練習するということは宝くじを買うことと一緒なんですよ。買わなかったら絶対に当たらない。それでも、10枚より100枚、100枚より1000枚、1000枚より1万枚買ったほうが当たる確率は高くなりますよね。もちろん、100万枚買ったからって10億円当たるとは限らないですけどね(笑)」

厳しい言葉ばかりが並んでいるように思えるかもしれないが、考えてみれば当然のことばかりである。どれだけの時間を練習(=野球のことを考える時間含む)に当てられるか。これがうまくなることへの近道なのだ。うまくなるための魔法なんてものはないのである。


里崎智也(さとざき ともや)プロフィール

鳴門工業高校、帝京大学を経て1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団し、2014年までNPBで16シーズンを過ごした元捕手。現在は野球解説者、評論家、YouTuberとして活躍。2005年と2010年に日本一を経験したほか、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では日本代表(現侍ジャパン)の正捕手として世界一に貢献。2008年には北京オリンピックにも出場した。NPBでの主な通算成績は、1089試合出場、打率.256、890安打、108本塁打、ベストナインとゴールデングラブ賞各2回(いずれも2006、2007年)。徳島県鳴門市出身、1976年5月20日生まれ。

取材・編集:勝田聡、丹治宣登(スポーティングニュース日本版)、及川卓磨(スポーティングニュース日本版)
撮影:早坂卓真
協力:林龍也
統括:舛田勇介(スポーティングニュース日本版)


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著者
Satoshi Katsuta Photo

かつた・さとし/東京都出身。複数の業界で営業、経営管理を行ったのち2015年に独立。同年よりNPB、MLBなどの記事作成、2022年からメディアのSNS運用など野球関連の業務を行っている。