エンゼルスは大谷翔平をトレードするのかしないのか? 決断を難しくするプレーオフ争い

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SHohei Ohtani Angeles
(Getty Images)

MLBの2023年シーズンが始まる前、ロサンゼルス・エンゼルスのオーナー、アルテ・モレノ氏はチームにプレーオフ進出の可能性があるときには世界的スーパースターの大谷翔平をトレードすることはないと明言した。

大谷という巨大な才能をさらに1シーズン留め置くことは野球界にとっては最良の決断とは言えないが、それでも十分に理解はできる。今シーズン終了後にフリーエージェントになる大谷がエンゼルスと長期契約を結んでチームに残留するとは到底思えない。大谷は唯一無二の選手であり、とくにこの2シーズンの活躍は我々がかつて見たことのないものだ。もし大谷が10月のプレーオフに出場し、野球界最大の舞台でスポットライトを浴びるチャンスを手にすることがあれば、それは素晴らしい光景になるだろう。

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モレノ氏はそのときに大谷がエンゼルスのユニフォームを着ていることを望んでいる。この春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で大谷がエンゼルスを代表したように、である。よく理解できる。誰もがそうだろう。

そしてオフシーズンの補強は堅実な成果が期待できるうえ、MLBのプレーオフ出場枠は拡張された。エンゼルスのプレーオフ進出が不可能だとは思われなかった。6月に入った現在、それは依然として不可能ではないが、3月上旬にモレノ氏が『スポーツ・イラストレイテッド』誌(以下SI)の記事で語ったときに比べるとやや可能性が小さくなったように見える。

そのときのモレノ氏の発言をもう一度振り返ってみよう。

モレノ氏:私は断言します。私たちがプレーオフ枠を争っている間は大谷をトレードすることはありません。

SI誌:もしプレーオフ進出の見込みがなくなったときはどうしますか?

モレノ氏:その質問に答えることはできません。なぜなら、私たちはプレーオフに進出するつもりだからです。私たちが推し進めているチーム計画はすべてプレーオフに進出することが目的なのです。ですから私はその計画が上手く行かなかったときのことを思い悩みはしません。これからリングに上がるボクサーが負けたときのことを考えるでしょうか。もしそうなら、そのボクサーはすでに負けています。

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エンゼルスの今季ここまでの戦績

エンゼルスのここまではけっして悪くはない。しかし、非常な激戦であるアメリカン・リーグのプレーオフ枠レースにおいて、すでに目が腫れあがり、足元がふらついているような状況でもある。

大谷が先発登板した6月9日のシアトル・マリナーズ戦が終了した時点で、エンゼルスの戦績は35勝30敗、しかも5連勝中である。アメリカン・リーグ西地区トップのテキサス・レンジャーズとのゲーム差は6.5であり、ワイルドカード枠の最後である3番目からは1.5ゲーム差だ。エンゼルスのすぐ上を行くトロント・ブルージェイズとのゲーム差は1にすぎない。けっして越えることが難しい坂ではない。大谷がエンゼルスに加入してから初めて、山頂に雪を頂いた高山ではなく、登れそうな坂が目の前に見えているのだ。

率直に述べるなら、これはエンゼルスにとって最悪のシナリオであるかもしれない。大谷をどうするかという問題に関しての話ではあるが。もしエンゼルスがシーズン序盤に振るわなければ、大谷のトレードを決断することはもっと容易であっただろう。実際にトレード交渉を進めることは困難であっても、進むべき道は明白に示されたはずだ。

もしエンゼルスの戦績が今より良かったとしたら、同じように迷うことはなかったはずだ。たとえば、現時点であと4試合多く勝っていたとすれば、エンゼルスの戦績は39勝26敗になり、地区でもワイルドカード枠でもレース順位は有利な位置になっていた。言うまでもなく、プレーオフ進出の可能性が大きければ、エンゼルスが大谷をトレードすることはない。

しかし、現在のエンゼルスは不確かな中間地点に挟まってしまっている。

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大谷翔平をトレードする場合としない場合

数字の上ではエンゼルスにプレーオフ進出の可能性はある。それは事実だ。しかし現実的にはどうだろうか。微妙なところだ。もしエンゼルスがプレーオフを諦めて、大谷をトレードするのであれば、その時期は早ければ早いほど、チームの利益は大きくなる。

現在の大谷は打者としてはアメリカン・リーグの本塁打王争いで2位タイ、そして投手としては同リーグ奪三振王争いで3位である。大谷を獲得するために資金を費やすチームからすれば、可能な限り早くトレードを成立させたいはずだ。

もしエンゼルスが大谷をトレードしないことを決めた場合、今シーズン終了後には大谷をフリーエージェントで失うことになる。そうなるとエンゼルスはトレードで発生したはずの利益からすると、ほんの一部分を受け取ることになる。チームは当然クオリファイング・オファーを出し、大谷はそれを拒絶するだろう。すると2024年MLBドラフトにおいてエンゼルスは1巡目指名のすぐあとに補償指名権を手にすることができる。たったそれだけである。大谷をどうするかの決断が今後の球団経営に大きな影響を与えるのはそのためだ。

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大谷翔平をトレードせざるを得ない場合の想定される時期

もうひとつある。仮に今日エンゼルスが大谷をトレードすることは不可避であると決断したとしても、その時期がオールスターより前になることは想像しにくい。ここまで来て、大谷が別チームのユニフォームでオールスターの舞台に現れるのを見るのは耐えられないと思えるからだ。

シーズン前半残りのエンゼルスの試合日程は興味深い。一方では13試合をカンザスシティ・ロイヤルズ、コロラド・ロッキーズ、シカゴ・ホワイトソックス、そしてサンディエゴ・パドレスという不調の相手と戦う。しかし、残り11試合の相手はレンジャーズ、ロサンゼルス・ドジャース、そしてアリゾナ・ダイヤモンドバックスと好調のチームばかりである。さらには24試合中15試合が敵地での戦いになる。

間違いなく、厳しい状況だ。

いずれにしても、エンゼルスはオールスター前には決断だけはしなくてはいけない(注:MLBオールスターゲームは現地7月11日、トレード期限日は現地8月1日)。大谷に関する決断は先送りにできるものではない。大谷を獲得することに興味を持つチームにとってもオファーのパッケージを決めるための時間が必要になる。

これは2本の電話で簡単に決まるような取引にはならない。「次の10年」を定義する決断なのだ。そして残された時間は多くない。

原文: Shohei Ohtani trade decision made difficult with Angels in playoff contention limbo
翻訳:角谷剛

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著者
Ryan Fagan Photo

Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.