「メイウェザー vs. NYマフィア大ボスの孫」で起きた乱闘の結末はヤラセ? 裁いたレフェリーは誰?

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Floyd Mayweather in a boxing ring
(Getty Images)

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2023年もエキシビションマッチで精力的に荒稼ぎする、50戦無敗のボクシングレジェンド、フロイド・メイウェザー・ジュニアの最新試合が不穏な結果に終わった。そもそも相手が「ニューヨークマフィアのボスの孫」といういわくつきの人物であったこともあり、戦前から物議を醸すカードだった。

乱闘騒ぎで騒然となった問題のエキシビションマッチの背景、そしてこの試合を裁いたのが業界でも知られた名レフェリーであったことなど、本誌ベテラン記者のベン・ミラーが伝える。


6月11日(日本時間12日)、ボクシング界のレジェンド、フロイド・メイウェザーがジョン・ゴッティ3世を相手に行ったエキシビション・マッチは大混乱の結末を迎え、リング外での大乱闘までをも引き起こした。

6ラウンド目に不可解な試合終了が宣せられると、会場の米フロリダ州FLAライブ・アリーナ近辺でも乱闘騒動が起きたと報じられた。

ゴッティはプロのMMAファイターであるが、ニューヨーク5大マフィアのひとつであるガンビーノ・ファミリーのボスだった人物の孫としても知られている。その人物像通り、試合後の不穏な騒動に背を向けることもなかった。

一体この試合で何が起きたのか。試合を裁いたレフェリーは誰だったのか。集団乱闘は「本物」だったのか。我々が知るすべては以下の通りである。

フロイド・メイウェザー vs. ジョン・ゴッティ3世で何が起きたのか

慌ただしく決まったエキシビションマッチが始まる前には、両ファイターの間で激しい口論の応酬があったようだ。しかし、試合開始のベル(ゴング)が鳴った途端、史上最もディフェンススキルに長けたボクサーと言われるメイウェザーがいつものように易々と仕事をこなすかのように見えた。

メイウェザーが経験の浅いボクサーを相手に試合を楽々と支配しながらおふざけを繰り返すのは、長年このベテランを見てきたファンにとってはお馴染みの光景だった。

だが、6ラウンド目途中、レフェリーのケニー・ベイレス氏が突然試合を止め、試合中に口論を止めなかったことを理由に両ファイターへ失格を言い渡した。

ゴッティは明らかに試合を続行する意思を示し、なおもメイウェザーに突進してパンチを浴びせようとした。

メイウェザーにとって、試合が止まったあとにノックアウトの危機が訪れることは初めての経験ではなかった。それどころか、彼自身が仕掛けた「前科」がある。2011年9月、WBC世界ウェルター級王座をかけたビクター・オルティス戦では試合が中断したと思われた隙に相手をノックアウトし、物議を醸したことさえあったからだ。

46歳のメイウェザーは、殴りかかってきたゴッティにカウンターのパンチを返した。しかし、すぐに両コーナー陣営と大勢のセキュリティらがリング内に殺到し、キャンバス上は大混乱に陥った。

試合が終了したことが繰り返しアナウンスされ、全員をリングから降ろす試みが断続的に行われて、メイウェザーは退場した。この際、観客席でもいくつかの乱闘が発生したとも報じられた。

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メイウェザー vs. ゴッティ3世戦のレフェリー:ケニー・ベイレス氏とは何者か、日本で裁いたことも

今回の試合を裁いたケニー・ベイレス氏は、73歳になる大ベテランのレフェリーだ。長年に渡るキャリアでいくつもの大試合を裁いた経験を持つ。そのなかには現役時代のメイウェザー、マニー・パッキャオ、そしてカネロ・アルバレスらのタイトル戦も含まれる。

ネバダ州のレフェリーであるベイレス氏は、2013年のメイウェザー vs. カネロ戦、そして2015年のメイウェザー vs. パッキャオ戦も裁いた。

最近では2020年のタイソン・フューリーとデオンテイ・ワイルダーの第2戦、その翌年にジョシュ・テイラーがホセ・ラミレスに勝利してスーパーライト級4団体統一をはたした試合でもレフェリーを務めた。

メイウェザーが自身4度目のエキシビションマッチで、RIZINで知られるMMAファイター兼YouTuberの朝倉未来を2回TKOで下したときも、さいたまスーパーアリーナで試合終了を宣したのはベイレス氏だ。メイウェザーは朝倉戦で2000万ドル(約28億円)を稼いだと報じられ、試合後は関係者だけでなく「日本の国すべてに」感謝すると放言した。

その2か月後、ベイレス氏はメイウェザーがドバイでYouTuberのデジを6ラウンドTKOで下した試合でもレフェリーを務めた。もはやメイウェザー「お抱えのレフェリー」と言えるかもしれない。

メイウェザー vs. ゴッティ3世の乱闘はヤラセだったのか

我々はこの乱闘がニセモノ(ヤラセ)であったかどうかを知ることはないだろう。しかし、その模様がSNSで拡散され、この試合で最も多くの注目を集め、そして物議を醸すシーンになったことは事実だ。その後も様々な方面からまことしやかな新情報も飛び出すなど、まだまだ騒動は収まらない。

一方で視聴者からはこの騒動はあらかじめ「脚本に書かれていた」とする憶測が数多く飛び交っている。そうした疑惑が生じることは有名人が絡む試合では珍しくない。たとえば2月に行われたトミー・フューリー vs. ジェイク・ポール戦も結末は始めから決まっていたという噂がある。

作家でNBA取材でも知られるスポーツ記者のパオロ・ソンコ氏も、そのような不満を抱いた視聴者のひとりだ。「もしこの件について真実があるとすれば、それはフロイド・メイウェザーとジョン・ゴッティ3世が、ボクシングというスポーツをWWE(プロレス)の番組と同じレベルに引き下げてしまったことだ。私はプロレスに反感を持っているわけではなく、むしろ大好きだ。少なくとも彼らはファンに作り物のエンターテイメントを提供していることを(プロとして)自覚している」とソンコ氏は、籍を置くスポーツメディア『Clutchpoints.com』の記事でつづった。

当然「台本」の存在を当事者はおくびにも出さないが、ゴッティは怒りを隠さなかった。自身のInstagramでメイウェザーに対し、再戦を匂わせるように「お前は俺の一生の敵だ。俺を倒すことも、止めることもできなかったじゃないか。俺が失格になる理由は一切ない」と攻撃した。

この試合はメイウェザーにとって7度目のエキシビションマッチだった。そのなかで最も有名な試合は、2021年6月に対戦したソーシャルメディアの大物、ローガン・ポール戦だろう。

フロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムで行われたこの試合は、こうした「茶番劇」が思いもかけぬ大金を生むことを間違いなくメイウェザーにアピールしてしまった。今回のゴッティ戦前にリアリティTVスターのアーロン・チャーマーズを倒したあと、このビジネスマンは自身が築いた富を誇り、プライベート・ジェット機と高級住宅を所有していると発言した。

ただ、2万人を収容できるロンドンのO2アリーナは、格闘界では無名のチャーマーズ戦では満員の客入りからはほど遠く、メイウェザーのエキシビションマッチとしては成功したイベントとは言えなかった。この失敗を受けてのゴッティ戦ということを考えると、優れたビジネスマンであるメイウェザーが無策で臨むだろうか。物議を醸した試合の再戦がさらに注目を集めるのは格闘技界のセオリーのひとつだからだ。

メイウェザーとローガン・ポールとの試合は、弟ジェイクも巻き込んだリング外での「場外戦」が話題になった。エキシビションビジネス全体にとって大きな転換点となったこの試合で味をしめたメイウェザーがハイペースで試合をこなす一方、引き分けたローガン・ポールはこの経験を武器にWWEとの大型契約を結んだ。WWEでのローガンはスポット参戦ながら「パートタイムプロレスラー」として高い評価を得た。

メイウェザーはこのエキシビションビジネスをエンターテイメントと言い切るが、同時に、自分の影響力が対戦相手の将来的な「利」になることを理解しているのだろう。

もっとも、プロ戦績と同様に、メイウェザーはエキシビションマッチにおいても無敗である。以下がその戦績だ。

日付 対戦相手 会場 結果
2023年6月 ジョン・ゴッティ3世 フロリダ州、FLAライブ・アリーナ ノー・コンテスト
2023年2月 アーロン・チャーマーズ ロンドン、O2アリーナ 判定なし
2022年11月 デジ・オラトゥンジ ドバイ、コカ・コーラ・アリーナ 6回TKO
2022年9月 朝倉未来 さいたまスーパーアリーナ 2回TKO
2022年5月 ドン・ムーア アブダビ、エティハド・アリーナ 判定なし
2021年6月 ローガン・ポール フロリダ州、ハードロック・スタジアム 判定なし
2018年12月 那須川天心 さいたまスーパーアリーナ 1回TKO

メイウェザー vs. マクレガー:エキシビションビジネスの端緒となったMMAファイターとの試合

メイウェザーのプロとして最後の試合はその後の姿を予感させるものだった。UFC2階級王者、しかし、ボクシングの経験には乏しいコナー・マクレガーを対戦相手に選んだのだ。

MMAで絶大の人気を誇るマクレガーは(MMAデビュー前にボクシングもかじっていたこともあり)、メイウェザーを相手に10ラウンド目まで戦い続け、期待に違わない健闘を見せた。試合前のトラッシュトークの応酬でもメイウェザーに負けていなかった。

この試合は2017年8月26日にネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催され、興行面では合計収益が8億3190万ドル(約1123億円)という歴史的成功を収めた。

メイウェザーにとっては、この試合はプロ50戦無敗のマイルストーンを達成すると同時に、引退後のエキシビションビジネスの端緒となったが、マクレガーはその後の4試合で3敗を喫している。ハビブ・ヌルマゴメドフにライト級のベルトを奪われ、2021年にはダスティン・ポイエーに2連敗した。

マクレガーは最近では、NBAファイナルのマイアミ・ヒート vs. デンバー・ナゲッツ戦で、自身の商品の宣伝のために登場した。この際、ヒートのマスコットを病院送りにしたというニュースで話題になったが、どうやらこちらもマクレガーが手掛ける鎮痛剤のプロモーションだったことが囁かれている。

原文:Floyd Mayweather vs. John Gotti III brawl: Was it staged? What happened in the fight and who was the referee?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮

*本記事は英語記事を翻訳し、日本向けの情報を加えた編集記事となる。


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著者
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Ben Miller is a content producer for The Sporting News.