米国人記者はメイウェザーと戦う朝倉未来をどうみる? 元UFC王者マクレガーと比較|超RIZIN特集

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Floyd Mayweather - Mikuru Asakura - Conor McGregor
(SN/GETTY)

9月25日開催の『超RIZIN』(スーパーライジン)で、プロボクシング50戦無敗の元5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)と「路上の伝説」こと朝倉未来(あさくらみくる)がエキシビションマッチを行う。

メイウェザーが戦う2人目の総合格闘家となる朝倉について、本誌米国記者ダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)が欧米格闘業界の視点からメイウェザーと因縁関係にあるコナー・マクレガーとの比較などを交えて紹介する。

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「9分で2000万ドル」天才メイウェザーはエキシビションで荒稼ぎ

2017年に引退したあと、フロイド・メイウェザーは自身のボクシング人生が完全に終焉していないことを理解していた。50戦50勝0敗という完璧な記録を壊さずにボクシングで大金を稼ぐため、メイウェザーは自身のレガシーと才能を最大限に活かせるエキシビションマッチビジネスに進出した。その稼ぎは「常に毎分数百万(ドル)だ」とメイウェザーは豪語する。

「この(朝倉との)エキシビションだけで、1500万から2000万ドル(約21億5000万〜約28億6700万円、1ドル/143円で換算、以下同)以上を稼ぐことができるんだ。そんなのはこのエキシビションだけだよ。だから、それは素晴らしいことなんだ。9分(3分3ラウンド)で2000万ドル、悪くないね」

文字通りの「マネー」の異名で知られる男は、朝倉戦でどれだけ稼げるかを示すため、『ESnews』に最初の記者会見に出席するだけで150万ドル(約2億1500万円)以上稼いだと語った。それ以前にも『Fight Hype』の取材に対して、元トレーニングパートナーのドン・ムーアとのアブダビでの試合の記者会見に出席しただけで100万ドル(約1億4330万円)を稼いだと話した。

メイウェザーはやり手のマッチメイカー兼プロモーターでもある。この新たなステージでメイウェザーが直面した対戦者のレベルは、プロから初心者ファイターまで様々だが、ボクシング殿堂入りを果たした天才の最新の試合が、格闘技ファンに「今後の何か」を期待させるMMAファイターとの戦いというのは計算済みのことだろう。ファンを楽しませることが大金を生むことを知っているのだ。

2017年8月26日のコナー・マクレガーとの最後のボクシング・プロ公式戦以来、メイウェザーは純粋なMMAファイターと対戦していない。2018年大晦日には、キックボクサーの那須川天心と対戦したが、日本のRIZINの看板スターである朝倉は、マクレガーが試合にもたらしたのと同様の刺激的な視点を与えてくれる。メイウェザー自身はそうした筋道を作り、報酬額を引き上げるわけだが――。

朝倉(16勝3敗1無効試合)とマクレガー(22勝6敗、メイウェザー戦前21勝3敗)は異なる成功の道をたどってきた。2人の年齢を比較すると4歳の差があるが、30歳の朝倉は、マクレガーがメイウェザーと戦ったときよりも1歳年上になる。もちろんメイウェザーも歳をとっているが。では、両者のリング内でのキャリアはどのように比較できるだろうか。

ここからはダニエル・ヤノフスキー記者が朝倉とマクレガーの概略を踏まえつつ、両者の共通点や違いについて分析する。 

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朝倉未来の略歴

ストリートファイトあがりの朝倉未来は、2012年にプロ初試合で勝利。2015年に『THE OUTSIDER』で65-70kgおよび60-65kg級の2階級制覇後、『Road FC』、『DEEP』を経由して、2018年8月から日本最大のMMAブランド『RIZIN』に参戦した。

朝倉は、元UFCベテランファイター・日沖発(ひおき・はつ)にTKO勝ちでRIZINデビューを飾るとその後7連勝。2020年11月にRIZIN初代フェザー級王座をかけて斎藤裕と対戦したが、判定負けでRIZIN初黒星を喫した。斉藤との王座戦後、朝倉は3勝1敗で勝ち越しており、現在2連勝中だ。そのうちの1勝は、斎藤へのリベンジに成功した2021年12月末の試合であり、朝倉の直近の試合だ。RIZIN通算戦績は10勝2敗となっている。

RIZINの顔役として欠かせないスターとなった朝倉は、牛久絢太郎の持つフェザー級タイトル挑戦か、2021年6月に初の失神一本負けを喫した相手であるクレベル・コイケとの雪辱戦に進むかと思われていたが、6月にメイウェザーとのエキシビション戦が発表された。

2022年9月24日現在のMMAプロ戦績は20戦16勝(8KO)3敗、無効試合1(『THE OUTSIDER』在籍時)となっている。

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コナー・マクレガーの略歴

幼少の頃にボクシングを始めたマクレガーの格闘家としてのプロデビュー年には諸説あるが、2008年に地元アイルランド・ダブリンでMMA選手としてデビュー。2013年に世界最大のMMAプロモーション『UFC』と契約すると、2016年の「UFC 194」にて、ジョゼ・アルドをわずか13秒で撃破してフェザー級王者になると同時に、MMAファンの誰もが知るスーパースターとなった。 

その後、当時UFCで最も人気のあったネイト・ディアスとの一連の遺恨マッチを展開。マクレガーは「UFC 196」で、リアネイキッドチョークに捕まりUFC初黒星となるも、「UFC 202」でのダイレクトリマッチを2-0の判定勝ちで雪辱を果たした。さらに同年、マディソン・スクエア・ガーデンで行われた「UFC 205」では実力者エディ・アルバレスを破ってUFC ライト級タイトルを獲得し、2階級制覇に成功。しかも2階級の同時保持は史上初だった。

2017年8月のメイウェザーとの「世紀のボクシングマッチ」後(詳細は後述)、マクレガーはMMAに復帰するも、快進撃中だったハビブ・ヌマゴメドフに「UFC 229」で敗れ、ライト級王者から陥落。ハビブ戦から約2年後の2020年1月、ドナルド・セローンを破った。

翌2021年1月、6年8か月ぶりの対戦となったダスティン・ポワリエにTKO負け。両者の対決は1対1のイーブンとなり、トリロジー抗争としてヒートアップしたが、同年7月の「UFC 264」では、練習中の疲労骨折を押して出場したマクレガーの左スネが異様な方向に曲がる事態となり、ドクターストップのTKO負けとなった。現在、手術を終えて治療を続けており、全快後には再びメイウェザーと戦うのではないかと噂されている。 

2022年9月24日現在のMMAプロ戦績は28戦22勝(19KO)6敗、ボクシングプロ戦績は1戦0勝1敗だ。

2018年のメイウェザー vs. マクレガーとは?

試合開始とともにマクレガーの一挙手一投足にT-モバイル・アリーナの2万人の群衆が歓声を上げる状況が続いた。試合が膠着すると、マクレガーはUFCでの試合中によく見せたように、両手を後ろで組んでメイウェザーを挑発した。

マクレガーは最初の数ラウンドでクリーンショットを度々ヒットさせ、脚を使ってメイウェザーを翻弄。4ラウンド以降、メイウェザーに体力の消耗もみられた。マクレガーの猛攻によって中盤まで決定機を作れなかったメイウェザーだったが、9ラウンド目でマクレガーをよろつかせると、10ラウンド目に決定的な一撃でTKOを奪い、自身の戦績を50戦50勝0敗に更新した。

なお、ボクシング統計サイト『CompuBox』によると、メイウェザーは320発中170発(53%)、マクレガーは430発中111発(26%)をヒットさせていた。メイウェザーは最初の3ラウンドで1ケタのパンチ数だったが、その後ペースを上げ、9ラウンドに42発、10ラウンドに20発を叩き込んだ。対してマクレガーは二桁ヒットを4つのラウンドで記録。マクレガーの善戦ぶりは、現在も再戦が期待されるだけの内容だったといえる。

メイウェザーにとって、朝倉とマクレガーのどちらがよりタフな相手なのか?

ボクシングが本職とはいえないYouTuberのローガン・ポールや、18勝0敗1分の元プロボクサーとはいえ峠を超えたドン・ムーアと比較して、キャリアの全盛期にある朝倉は、メイウェザーにとって純粋に脅威と言える。

2018年、マクレガーは勢いよくメイウェザー戦に臨んだ。しかし、その荒削りなスタイルは、メイウェザーの卓越したボクシング能力には十分ではなかった。このカードはリング内外で面白い戦いが展開されたものの、メイウェザーは自らの天才的な能力を持ってして、悪名高いアイリッシュマンをTKOで料理した。

朝倉は接近戦で勝負に出ることを好む。マクレガーはボクシング挑戦前、リーチを生かしたファイターだった。前に出て素早い攻撃を当てに行くことも多い朝倉だが、メイウェザーのように忍耐強いファイターになることもできる。

2019年のジョン・マカパ戦では、朝倉は距離をとりながら、時間をかけて左を打ち込み続けた。マカパの反撃をかわし、ジャブとアッパーカットも決めた。朝倉は第3ラウンドまでにマカパの癖を見極め、相手の勢いを逆手にとる冷静な試合運びをみせ、全会一致の判定勝ちを収めた。

朝倉がメイウェザー戦に向けて公開したスパーリング映像では、ジャブに続いて強烈なフックを打ち込むシーンがみられた。そのフックにつながるコンビネーションは、朝倉の試合での執拗さを考えると、まさに勝負の分かれ目となるかもしれない。

また、日本人プロボクサーで現WBA世界ライトフライ級スーパー王者の京口紘人とのトレーニングでは、ジャブが非常に重要であることを学んだ。京口はリーチがこそが勝敗のカギを握ると助言した。メイウェザーは72インチ(183cm)のリーチを持つが、朝倉のリーチは未知数だ。国内情報では174cmとされるが、京口が指摘したように、総合格闘技におけるステップでの間合いの出入りはリーチ不足を補い、朝倉のアドバンテージになる可能性がある。

なお、メイウェザー vs. マクレガー戦において、マクレガー(74インチ=188cm)のジャブ全ヒット数は27発、メイウェザーは18発だった。

朝倉は16勝中8KOをあげているが、そのうちのいくつかはキックによるものだ。とはいえ、その打撃力は注目に値する。マクレガーがそうであったように、朝倉はこの試合に向けて勢いがある。ボクシングにうまく適応できれば、メイウェザーに一泡吹かせることもできるかもしれない。

一方でマクレガーとは異なり、トラッシュトークで熱くならず、試合まで冷静さを保つ朝倉は、自身のスキルがすべてを語るような戦いを望んでいる。マクレガー以上にメイウェザーを追い込むことができるのかは、最初のゴングが鳴るまでわからない。

フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来はいつ?

  • 日時:2022年9月25日(日)
  • 開始時間:13:00頃予定
  • 開催地:さいたまスーパーアリーナ

メイウェザー vs. 朝倉のボクシングエキシビションマッチは、9月25日日曜、さいたまスーパーアリーナのイベントの第1部『超RIZIN』のメインイベントとして、13時頃スタートを予定している。 Bellatorを主戦場にする堀口恭司は、15時開始予定の第2部『RIZIN.38』に登場する。

フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来の視聴方法は?

世界50か国で配信を予定する『超RIZIN』&『RIZIN.38』だが、日本国内向けには、インターネット動画配信サービス『ABEMA PPV』、RIZIN公式サービス『RIZIN STREAM PASS』、唯一の(BS/CS)テレビ放送となる『スカパー!』、のほか、『Exciting RIZIN』、『RIZIN LIVE』、『U-NEXT』、『VR-MODE』といった各プラットフォームでPPVライブ中継される。

将来的にRIZIN公式YouTubeチャンネル等で試合映像が配信される可能性はゼロではないが、インターネットおよび地上波テレビ、BS、CSテレビ放送は予定されておらず、ライブでの無料視聴はできない

フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来のPPV視聴価格は?

  • 前売:6000円/税込(最安値ABEMA=4800円)
  • 当日:6600円/税込(最安値ABEMA=5280円)
  • アーカイブ:3000円/税込(最安値ABEMA/RIZIN STREAM PASS=2400円)

メイウェザー vs. 朝倉未来戦を含む『超RIZIN』&『RIZIN.38』のPPV視聴価格は、上記がおおよその値段となるが、各プラットフォームによって価格が変動し、これより安いケースもある。『ABEMA』ではプレミアム会員(月額税込960円)なら、税込4800円相当の4000コイン(ただしiOS/Androidアプリでの購入はPPV手数料として960円相当の800コインが加算される)、『RIZIN STREAM PASS』では会員(月額税込550円)なら税込5400円、『スカパー!』なら税込6000円となっている。

『スカパー!』はライブ配信終了後のアーカイブ(見逃し)配信価格が設定されていない。

フロイド・メイウェザー vs. 朝倉未来の大会対戦カード|9.25 『超RIZIN』&『RIZIN.38』

『超RIZIN』

  • ボクシング・エキシビションマッチ・フリーウェイト(13:00~14:00予定)
    • 朝倉未来 vs. フロイド・メイウェザー
  • キックボクシングルール3分3R(肘有り)・53kg契約
    • 吉成名高 vs. バンダサック・ソー・トラクンペット
  • MMA特別ルール3分3R・53kg契約
    • 三浦孝太 vs. ブンチュアイ・ポーンスーンヌーン
  • スタンディングバウトルール3分3R・フリーウェイト
    • 皇治 vs. ジジ

『RIZIN.38』

  • RIZIN MMAルール5分3R・61kg契約
    • 堀口恭司 vs. 金太郎
  • RIZIN MMAルール5分3R・61kg契約
    • 扇久保博正 vs. キム・スーチョル
  • RIZIN WORLD GP2022 スーパーアトム級トーナメント2回戦/RIZIN MMAルール5分3R・49kg契約
    • 伊澤星花 vs. アナスタシア・スヴェッキスカ
  • RIZIN WORLD GP2022 スーパーアトム級トーナメント2回戦/RIZIN MMAルール5分3R・49kg契約
    • 浜崎朱加 vs. パク・シウ
  • RIZIN MMAルール5分3R・66kg契約
    • 萩原京平 vs. 鈴木千裕
  • RIZIN MMAルール5分3R・71kg契約
    • 大原樹理 vs. ルイス・グスタボ
  • RIZIN MMAルール5分3R・120kg契約
    • シビサイ頌真 vs. カルリ・ギブレイン

※当記事は、本誌英語記事(著者Daniel Yanofsky)を翻訳、再編集のうえ追加情報を加えた日本版記事となる。

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著者
Daniel Yanofsky Photo

Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.