大谷翔平をトレードしないと決めたエンゼルス、プレーオフ進出のために必要な補強は?

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Shohei Ohtani
(Getty Images)

現時点での状況を鑑みると、どうやら大谷翔平は2023年シーズン終了までアナハイム(ロサンゼルス・エンゼルスの本拠地)に留まるようだ。世界的な二刀流のスーパースターはシーズン終了後にはフリーエージェントになる。今年の春、オーナーのアルテ・モレノ氏はチームにプレーオフ進出の可能性がある限りは大谷をトレードしないと言った。そして先週、GMのペリー・ミナシアン氏も大谷への対応について「言うまでもない」と述べ、トレードがないことを強く示唆した。

6月27日(日本時間28日)のシカゴ・ホワイトソックス戦を前にして、エンゼルスはアメリカン・リーグ西地区で首位から僅か0.5ゲーム差で追っており、ワイルドカード争いでも最終枠から0.5ゲーム差の位置にある。貯金は6ゲームだ。2018年シーズンに大谷がエンゼルスに加わって以来、このチームがシーズンのこの時期にここまでプレーオフに近づいたことはかつてない。

チームとしての総合力が以前より上がっていることはもちろんだが、大谷の存在こそがその最も大きな理由であることは明白だ。6月26日(同27日)に大谷はまたしても本塁打を打った。現在の26本塁打、62打点、そして1.009 OPSはすべてMLB全体でトップである。

投手としても防御率3.15で、大谷が先発登板した試合でのエンゼルスの戦績は10勝5敗だ。指名打者として3.0 bWAR, 投手として2.4 bWARである。信じがたいとしか言いようがない。
 

こうなると、今後の数週間でよほどの大事件が起こらない限り、8月1日のトレード期限までにエンゼルスが大谷をトレードすることはないだろう。どのように「賢明な」判断が下されたとしても。どのチームにも、現在のメジャーリーグ本塁打王で、トップ級の先発投手でもある選手に見合うトレード要員などは存在するわけもない。

2024年シーズン以降に大谷がエンゼルスに残る可能性は極めて小さいように思える。これまでのエンゼルスの低調ぶりと、そして大谷を引き留めるためには数百億円の資金が必要となるからだ。大谷がフリーエージェントによってエンゼルスを去ったときにチームが受け取る補償金はトレードで得られるものに比べると微々たるものになるだろう。

それでもトレードは行われないようだ。エンゼルスの目標は大谷がまだエンゼルスのユニフォームを着ている間にプレーオフへ進出することだ。

大谷をトレードしないということは、エンゼルスは本気だということの証明でもある。

もちろん、本気なのであれば戦力アップに繋がる選手を獲りに行く。ジオ・ウルシェラの穴を埋めるためにエドゥアルド・エスコバーをトレード獲得したようなことではなく、戦力を底上げするための補強が必要だ。

ただし、それでもまだ足りない。エンゼルスは10月をアメリカン・リーグのワイルドカード枠3番目ぎりぎりで迎えたくないはずだ。それでは2試合に負けただけですべてが終わってしまう位置だからだ。

エンゼルスが本気なのであれば、10月に入るまでにワールドシリーズ制覇を狙うだけの25人をロースターに揃えなくてはいけない。エンゼルスの強みと弱点を分析し、どのような補強策をとるべきかを探ってみた。

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強打の内野手が必要

強打の内野手というのは、エスコバーや最近加入したマイク・ムスタカスのことではない。

新人のザック・ネトとベテランのアンソニー・レンドンが故障者リスト入りした今、エンゼルスは4つの内野手枠に9人の選択肢がある。そのうちの3人はメジャー40人枠に入っているが、現在はマイナーでプレイしている(ジャレッド・ウォルシュ、マイケル・ステファニック、ジェイク・ラム)。ここまで安定した打撃成績を挙げている内野手はブランドン・ドルーリーだけだ。それだけでなく、ドルーリーは1塁、2塁、そして3塁を守ることができる(状況によっては外野も)。エスコバーの実績は十分だが、34歳という年齢は懸念材料で、ここ数年は左投手を相手にした時に右投手より成績が良い。レギュラーではなく、控えの切り札的な選手だろう。

もしルイス・レンヒフォ(キャリア OPS+ 79、今シーズン63)、デビッド・フレッチャー(キャリア OPS+ 87)、そしてアンドリュー・ベラスケス(キャリア OPS+ 51)の3人のうち2人が同じ試合に出場することになれば、それは打力のある内野陣とは呼べない。

そうなると、どのような選択肢が残っているだろうか。必要性は指摘できたが、残念なことにオプションは多くない。トレード期限までにどのチームも必要な戦力を補強する方法はある。

ジェイマー・キャンデラリオ(ワシントン・ナショナルズ)は今シーズン好調だ。これまでに本塁打10本を打ち、OPS+は124である。今シーズン終了後にはフリーエージェントになるうえ、1塁と3塁のどちらも守ることができる。ティム・アンダーソン(シカゴ・ホワイトソックス)はギャンブルかもしれない。2024年に1400万ドル(約20億円)でチームに残留するオプションを持っているし、そもそも不調の今シーズンから復調する保証もないからだ。ポール・デヨング(セントルイス・カージナルス)は打率(.196)が低いが、長打力(51試合で11本塁打)はある。OPS+は103で、選択肢としては最良に近い。ジョシュ・ドナルドソン(ニューヨーク・ヤンキース)の獲得も可能性はある。

投手陣に新戦力が必要

ここまでエンゼルスの投手陣は意外に良くやっている。今シーズンここまで12試合以上に先発した投手が5人いて、そのうちの4人は防御率が4.16以下である。現在のメジャーリーグにおいて、まずまずの先発ローテーションと呼べる。リード・デトマーズはますます安定した3番手になってきているし、パトリック・サンドバルも悪くない。グリフィン・カニング(防御率3.99)も良くやっている。ただ、フリーエージェントで契約したタイラー・アンダーソンが14先発登板で防御率5.54と苦しんでいる。

しかし、ただポストシーズンに進出するだけではなく、さらにその先を目指すのであれば、可能な補強策はある。エドゥアルド・ロドリゲス(デトロイト・タイガース)はその筆頭候補だ。2021年シーズン終了後に再建モードからの脱出を目指していたタイガースと契約したが、チームの状態はそれ以前のままだ。賢明なことに、ロドリゲスはオプトアウトする権利を契約条項に含んでいる。

タイガースは不振だが、ロドリゲスは好成績を挙げている。現在は故障者リスト入りしているが、リハビリを始めようとしているところだ。復帰すれば、シーズン前半の調子(11先発登板で防御率2.13、キャリア最高のFIP、被安打率、奪三振率)を取り戻すだろう。プレーオフで先発ローテーション2番手を務めるには十分だ。シカゴにもう2人の有力候補がいる。ルーカス・ジオリト(シカゴ・ホワイトソックス、16先発登板で防御率2.47)は今シーズン終了後にフリーエージェントになる。マーカス・ストローマン(シカゴ・カブス、17先発登板で防御率2.47)はオプトアウトの権利を持っている。

救援投手陣に目を向けても、今のところけっして悪くはない。それどころか、良くやっているとさえ言える。しかし、プレーオフでの戦いを視野に入れるチームが救援投手陣の補強を考えないわけはない。とくに最近のポストシーズンでは強力な救援投手陣の重要性は明らかになっている。ここ数年のヒューストン・アストロズがその好例だ。

ひとりの名前を挙げるとしたら、今シーズン終了後にフリーエージェントになるジョーダン・ヒックス(セントルイス・カージナルス)だ。過去2シーズンと今シーズン序盤は不振であったが、直近17登板で防御率1.86、FIP 1.66、そして29奪三振と剛腕を発揮している。時速167キロ超の速球とえげつない変化球で『ピッチング・ニンジャ』の常連でもある。やや不安定ではあるが、重要な試合でクローザー役を務めるだけの力量はある。


原文: If the Angels aren't trading Shohei Ohtani, roster upgrades are critical for playoff run
翻訳:角谷剛
 

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著者
Ryan Fagan Photo

Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.